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Aoiro*Stone

自己満足な創作物ログサイト。 今のところ、過去に配信したメルマガのバックナンバーのみ。ログの更新は気まぐれ不定期。

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Aoiro*Stone/連載~10
2012年05月23日 13時03分 発行


【結び目10*シリウス*連載】




今日は休日だった。
久し振りに、前は休みの度に毎回のように来ていた薬草園の近くへ来てみた。
いつもどおり外に置いてある椅子に座り、そのまま風を感じる。

――シリウスが戻るのは、あと二日。
それだけの我慢だから。


かさっと草を踏む音がして、目を向ける。
大きな樹の下に、今歩いてきたばかりの様子のシリウスがいた。
まだこちらに気付いていない。
吃驚して思わず立ち上がりそうになるが、その時にはシリウスがこちらを見たので、変な反応しないように抑えた。


…どうしてここにいるの?


「あれ、…姫? こんなところで、何してるんだ?」


先に聞かれてしまう。
――2人きり。
この状態で無視する事も逃げる事も、ましてや誰かに頼る事もできない。
普通に、普通に、と心の中で何度も暗示をかける。


「…暇つぶし。シリウスは…?」
「俺はなんか…足が無意識にここに来るんだよな、休みになると、来たくなるんだ」


シリウスはよく分からない、というように「変だよな」と言ったけれど、私にはそれが何故だか分かっていた。
ここは、静かに2人きりで話せるように、シリウスと一緒に来ていた場所だ。
小さく、嬉しさが込み上げてくるのが分かった。


「隣、いいか?」
「、うん」


そのまま立ち去るかと思いきや、シリウスは更に近寄ってきた。
横に座られ、さすがに緊張する。

まぎらわすため、ふとシリウスの服に視線を向ける。
今日着ているのは、昔よく好んでいた系統の私服だった。
そこで、だんだん彼の服の好みが変わっていったのを思い出す。
私はどれも好きなので、久し振りに見た服を見て、まだ捨ててはいなかったのかと安堵した。


同時に、少しずつ自分自身が落ち着いてくる。
動揺して喋れなくなるかも、と思っていたが、なんとかなりそうな気がした。


「体調、よくなったか?」
「うん、平気、」
「嘘つき。寝てないだろ?」


苦笑し、シリウスは優しい手つきで私の頬を触る。


「目の下の隈、隠しきれてねぇぞ」
「…ばれた」


ドキドキする鼓動を誤魔化すように、小さく笑った。
シリウスはいつだって私の事を見てくれている。
それは変わっていない。


…ちゃんと顔を見て、やはりまだ彼が好きだと実感した。
馬鹿だと言われるかもしれないけれど、この人を嫌いになんてなれない。
彼が何をしようが、きっと好きになった気持ちは消えない。




「……お前、彼氏いる?」


ふと、静かになったシリウスが呟いた。




…* 雑記 *…

こんだけ弱気なマイナスなヒロインの思考を書いてくのは疲れるし、見ててイライラします(自分で書いておいて)。

頑張れば最後まで書けるんじゃん…とサボってた自分に反省します;







Aoiro*Stone/連載~11
2012年05月23日 13時05分 発行


【結び目11*シリウス*連載】




今一番聞きたかった事を、ようやく聞けた。
姫は驚いた顔をして、それから俺の意図を探るかのように見つめたが、すぐに視線を外した。


「…うん、付き合ってる人はいるよ」


その言葉に、ズキッと胸が痛む。


「、…でも、一年前より幸せに見えない」


痛んだ胸を隠してそう言えば、姫は無理矢理笑みを作ろうとした。

付き合っている奴がいるなら、もっと笑っていてもいいだろ。
そいつと居てもいいだろ。

なのに、なんで、


「そう…? 幸せだよ、すごく…、幸せだった、」


姫の瞳から見る見るうちに涙が溢れていた。


「ごめ、…最近涙腺弱くて、」


それを拭おうとする姫を、俺は抱き締めた。力いっぱいに。


「シ、リウス…?」
「――俺、お前が好きなんだ」
「――」
「…ジェームズ達が、“現在”の俺は誰かと付き合ってるって言ってて、…だから、とりあえず自力で探してみたけど見つからねえし、名乗り出ねえし」


なんで泣いているんだ?
誰がお前を泣かせている?


「で…、なんかもうあと2日だけだし、自分の本能っていうか、正直な気持ちを信じてみる事にして、――姫に告白した」


お前が好きなのは誰?
泣くほど、好きになっているのは、


「もし俺が戻った時、気まずくなったら悪い。でも、姫を好きなったのは今のこの俺だからな」


――それが、俺だったらいいのに。




ようやく姫から腕を解いた。
顔を見ると、驚きでなのか涙は止まっていて、残っていた水滴をそっと拭う。
言いたかった事が言えたせいか、俺の胸はこんな状況になってから初めて、すっきりした。


「…うん、やっぱりな。俺の服に付いてた匂い、やっぱお前のだよ」
「匂い…?」
「急に自分の着てた服から同じ匂いするから、何だとは思ったんだ。…写真とかは隠してたみたいだけど、姫の匂いまでは当たり前すぎて消せなかったみたいだ」


触ってやっと、確信した。
最初感じた匂いは、女と遊ぶ度、嫌な匂いに塗り潰され、消えていったけれど、それでも俺のいたるところに残されていた。
心地いい、お前の存在の証を。


「俺、だよな、姫と付き合ってたのは」


そうであって欲しいと願う半分、そうじゃなきゃおかしいという自信があった。
それでも、こんな自分を果たして姫が好きになるのだろうか、という不安もあるし、間違いだと言われるかもしれないという怖さもあった。


「違う? 違うなら言えよ、俺じゃないなら…」
「……シリウスが、好き、」


姫が小さい声で答えた。
見れば、拭ったはずの涙をこらえていた。
それは、嬉しいから?
それとも、辛い時を思い出したから?
今この瞬間を安堵したから?


今度は考える間もなく、姫を抱き寄せた。


「――っ…いっぱい傷付けた。それでも本当に、俺の事好きか?」
「好き」
「ふ…、幸せ者だな、俺」


何から言えばいいのか分からない。

けれど、“現在”の俺がどうしてこんな魔法を使ったのか、今なら分かる気がする。




どん底まで穢れていた俺を、純粋に好きになってくれた姫。
きっと“俺”は、現在も自分も過去の自分も同じように受け入れたかったんだ。
過去のどうしようもない俺でも、自分でさえ捨てたくなるような俺でも、きっと同じく姫を好きになるのだと。
そして姫も、俺を捨てないでいてくれると。
もしそれで俺達が終わってしまったら、それも自分の罰だと受け入れる覚悟で。
信じて、賭けて。

馬鹿な方法を思い付いた。
自分も姫も傷付く可能性がある方法を。
それとただ単なる好奇心。
だから、きっと、戻った時に“俺”は後悔する。
やらなければよかった、と。
ずっと、後悔するだろう。


それでも、きっと思う。
姫を好きになってよかったと。


俺達は絶対に離れないのだと。




…* 雑記 *…

記憶喪失になっても、また同じ人を好きになるとは限らない、を書こうとしたけど、あまりに姫が可哀想なので、こうなりました…。

今まで姫至上主義しか書かなかったんで、女遊びの激しい、酷いシリウスを書いたのは初でした。


本当はこれが最終話でした。
でも、まだ書きたい事があったため、次が最終話です。







Aoiro*Stone/連載~終
2012年05月23日 13時06分 発行


【結び目12*シリウス*連載】




しばらく俺達は、そこで座っていた。
何かを話すわけでもなく、ただ隣に座り、手を握った。
謝らなければいけない事がたくさんあった。
だけど、きっとそれは戻ってから、“俺”が言うだろう。

姫もどっと安心したのか、ようやく小さく笑うと、黙ったまま、俺に少し寄りかかった。

付き合った後の事は当然だが、分からない。
けれど、姫がこうやって、罪を犯した俺を見捨てずにいてくれるのなら、これ以上の幸せは無いと思った。



「…これから、大変だよな」
「…?」


関係を持った女達への後始末や、姫はもちろん、親友達へのお詫び、そして――何度も何度も洗濯された何も匂いの無い衣服への違和感。
自分自身の事だ。
少しの好奇心があったとは言え、こうなる事を分かっていたはずだ。

馬鹿だ。
馬鹿すぎる。

俺も、“お前”も。


思わず小さく呟いた俺を隣から見上げる姫に――不意打ちでキスをした。


「…ファーストキス、いただき」
「…? 初めてじゃないよ、」
「俺は姫とするの初めてだぜ?」


笑って言って、苦笑した姫に今度は長く唇を重ねた。

心地いい、安心する。
好きではない奴とキスをしたいとは思わない。
身体を重ねる事も、満たされる事は無い、ただの性欲の捌け口でしか無かった。
それ以上の事は知らない。
姫と会わなければ、一生知らなかったかもしれない。

好きな人だけに触れる事を。
愛情を持って、ただ1人を愛する事を。

その幸せな喜びを。




…**…




「――すげえ、記憶引き継いでる」


目を覚ました時、第一声がそれだった。
俺の声で、先に起きて身支度をしていたジェームズと、眠たそうに目蓋を開けたリーマスがこちらを見た。
ピーターはまだ夢の中である。


「おかえり親友。今、どんな気分だい?」


苦々しい笑みを浮かべながら、ジェームズが言う。


「最悪だな…あ~マジで俺、馬鹿じゃねぇ? ……っ」
「君が馬鹿なのは、僕等全員承知の事さ」
「もちろん、姫も…ね」


その一言だけを言うと、朝が弱いリーマスはまた眠りについた。

頭が少し混乱している。
1ヶ月分、別の記憶が入っているのだから当たり前だ。
否、俺自身の記憶ではあるが。

自身への嫌悪感が、止まらない。


「――俺、姫のとこ行ってくる、」


戻る日の朝、談話室で待っていると約束した。
急いで着替え、匂いのしない制服にしかめながら袖を通す。


「うん、やっぱ姫の匂いじゃなきゃ落ち着かねえ!」
「何言ってんの?」


呆れ顔でジェームズだけが俺を見送った。
階段を降り、談話室に顔を出せば、やはり姫はすでに待っていた。
足を止めずに、


「姫!」
「シリ、――わっ」
「っごめん、ごめん、ごめんごめんごめんごめん…! あー! 何回言っても謝れない気がする…!」


強く強く、ぎゅっと抱き締めながら、存在を確かめる。
姫が泣いていた顔だけが脳裏に強く焼き付く。

どうしようもない、後悔。
どうにもできない、後悔。


「許してほしい、なんて思ってない、むしろ許してほしくない、一生、…」
「シリウス…」
「姫…たくさん、たくさん言いたい事あるけど、」




“――愛してる”






それが俺とお前との、唯一の繋がり。
絶対切れない、強い結び。


この事を、俺は絶対忘れないだろう。




…* 雑記 *…

ようやく終わりです。
シリウス1人称の方が書きやすいでした。
匂いにこだわっているのは犬だから(笑)

連載途中、『満たない』と書いた部分、正しくは『満たされない』です。


次の連載は考えていますが、次からは全部書き終えてから配信する事にします…。


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