Aoiro*Stone
自己満足な創作物ログサイト。 今のところ、過去に配信したメルマガのバックナンバーのみ。ログの更新は気まぐれ不定期。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
Aoiro*Stone/連載~10
2012年05月23日 13時03分 発行
2012年05月23日 13時03分 発行
【結び目10*シリウス*連載】
今日は休日だった。
久し振りに、前は休みの度に毎回のように来ていた薬草園の近くへ来てみた。
いつもどおり外に置いてある椅子に座り、そのまま風を感じる。
――シリウスが戻るのは、あと二日。
それだけの我慢だから。
かさっと草を踏む音がして、目を向ける。
大きな樹の下に、今歩いてきたばかりの様子のシリウスがいた。
まだこちらに気付いていない。
吃驚して思わず立ち上がりそうになるが、その時にはシリウスがこちらを見たので、変な反応しないように抑えた。
…どうしてここにいるの?
「あれ、…姫? こんなところで、何してるんだ?」
先に聞かれてしまう。
――2人きり。
この状態で無視する事も逃げる事も、ましてや誰かに頼る事もできない。
普通に、普通に、と心の中で何度も暗示をかける。
「…暇つぶし。シリウスは…?」
「俺はなんか…足が無意識にここに来るんだよな、休みになると、来たくなるんだ」
シリウスはよく分からない、というように「変だよな」と言ったけれど、私にはそれが何故だか分かっていた。
ここは、静かに2人きりで話せるように、シリウスと一緒に来ていた場所だ。
小さく、嬉しさが込み上げてくるのが分かった。
「隣、いいか?」
「、うん」
そのまま立ち去るかと思いきや、シリウスは更に近寄ってきた。
横に座られ、さすがに緊張する。
まぎらわすため、ふとシリウスの服に視線を向ける。
今日着ているのは、昔よく好んでいた系統の私服だった。
そこで、だんだん彼の服の好みが変わっていったのを思い出す。
私はどれも好きなので、久し振りに見た服を見て、まだ捨ててはいなかったのかと安堵した。
同時に、少しずつ自分自身が落ち着いてくる。
動揺して喋れなくなるかも、と思っていたが、なんとかなりそうな気がした。
「体調、よくなったか?」
「うん、平気、」
「嘘つき。寝てないだろ?」
苦笑し、シリウスは優しい手つきで私の頬を触る。
「目の下の隈、隠しきれてねぇぞ」
「…ばれた」
ドキドキする鼓動を誤魔化すように、小さく笑った。
シリウスはいつだって私の事を見てくれている。
それは変わっていない。
…ちゃんと顔を見て、やはりまだ彼が好きだと実感した。
馬鹿だと言われるかもしれないけれど、この人を嫌いになんてなれない。
彼が何をしようが、きっと好きになった気持ちは消えない。
「……お前、彼氏いる?」
ふと、静かになったシリウスが呟いた。
…* 雑記 *…
こんだけ弱気なマイナスなヒロインの思考を書いてくのは疲れるし、見ててイライラします(自分で書いておいて)。
頑張れば最後まで書けるんじゃん…とサボってた自分に反省します;
Aoiro*Stone/連載~11
2012年05月23日 13時05分 発行
2012年05月23日 13時05分 発行
【結び目11*シリウス*連載】
今一番聞きたかった事を、ようやく聞けた。
姫は驚いた顔をして、それから俺の意図を探るかのように見つめたが、すぐに視線を外した。
「…うん、付き合ってる人はいるよ」
その言葉に、ズキッと胸が痛む。
「、…でも、一年前より幸せに見えない」
痛んだ胸を隠してそう言えば、姫は無理矢理笑みを作ろうとした。
付き合っている奴がいるなら、もっと笑っていてもいいだろ。
そいつと居てもいいだろ。
なのに、なんで、
「そう…? 幸せだよ、すごく…、幸せだった、」
姫の瞳から見る見るうちに涙が溢れていた。
「ごめ、…最近涙腺弱くて、」
それを拭おうとする姫を、俺は抱き締めた。力いっぱいに。
「シ、リウス…?」
「――俺、お前が好きなんだ」
「――」
「…ジェームズ達が、“現在”の俺は誰かと付き合ってるって言ってて、…だから、とりあえず自力で探してみたけど見つからねえし、名乗り出ねえし」
なんで泣いているんだ?
誰がお前を泣かせている?
「で…、なんかもうあと2日だけだし、自分の本能っていうか、正直な気持ちを信じてみる事にして、――姫に告白した」
お前が好きなのは誰?
泣くほど、好きになっているのは、
「もし俺が戻った時、気まずくなったら悪い。でも、姫を好きなったのは今のこの俺だからな」
――それが、俺だったらいいのに。
ようやく姫から腕を解いた。
顔を見ると、驚きでなのか涙は止まっていて、残っていた水滴をそっと拭う。
言いたかった事が言えたせいか、俺の胸はこんな状況になってから初めて、すっきりした。
「…うん、やっぱりな。俺の服に付いてた匂い、やっぱお前のだよ」
「匂い…?」
「急に自分の着てた服から同じ匂いするから、何だとは思ったんだ。…写真とかは隠してたみたいだけど、姫の匂いまでは当たり前すぎて消せなかったみたいだ」
触ってやっと、確信した。
最初感じた匂いは、女と遊ぶ度、嫌な匂いに塗り潰され、消えていったけれど、それでも俺のいたるところに残されていた。
心地いい、お前の存在の証を。
「俺、だよな、姫と付き合ってたのは」
そうであって欲しいと願う半分、そうじゃなきゃおかしいという自信があった。
それでも、こんな自分を果たして姫が好きになるのだろうか、という不安もあるし、間違いだと言われるかもしれないという怖さもあった。
「違う? 違うなら言えよ、俺じゃないなら…」
「……シリウスが、好き、」
姫が小さい声で答えた。
見れば、拭ったはずの涙をこらえていた。
それは、嬉しいから?
それとも、辛い時を思い出したから?
今この瞬間を安堵したから?
今度は考える間もなく、姫を抱き寄せた。
「――っ…いっぱい傷付けた。それでも本当に、俺の事好きか?」
「好き」
「ふ…、幸せ者だな、俺」
何から言えばいいのか分からない。
けれど、“現在”の俺がどうしてこんな魔法を使ったのか、今なら分かる気がする。
どん底まで穢れていた俺を、純粋に好きになってくれた姫。
きっと“俺”は、現在も自分も過去の自分も同じように受け入れたかったんだ。
過去のどうしようもない俺でも、自分でさえ捨てたくなるような俺でも、きっと同じく姫を好きになるのだと。
そして姫も、俺を捨てないでいてくれると。
もしそれで俺達が終わってしまったら、それも自分の罰だと受け入れる覚悟で。
信じて、賭けて。
馬鹿な方法を思い付いた。
自分も姫も傷付く可能性がある方法を。
それとただ単なる好奇心。
だから、きっと、戻った時に“俺”は後悔する。
やらなければよかった、と。
ずっと、後悔するだろう。
それでも、きっと思う。
姫を好きになってよかったと。
俺達は絶対に離れないのだと。
…* 雑記 *…
記憶喪失になっても、また同じ人を好きになるとは限らない、を書こうとしたけど、あまりに姫が可哀想なので、こうなりました…。
今まで姫至上主義しか書かなかったんで、女遊びの激しい、酷いシリウスを書いたのは初でした。
本当はこれが最終話でした。
でも、まだ書きたい事があったため、次が最終話です。
Aoiro*Stone/連載~終
2012年05月23日 13時06分 発行
2012年05月23日 13時06分 発行
【結び目12*シリウス*連載】
しばらく俺達は、そこで座っていた。
何かを話すわけでもなく、ただ隣に座り、手を握った。
謝らなければいけない事がたくさんあった。
だけど、きっとそれは戻ってから、“俺”が言うだろう。
姫もどっと安心したのか、ようやく小さく笑うと、黙ったまま、俺に少し寄りかかった。
付き合った後の事は当然だが、分からない。
けれど、姫がこうやって、罪を犯した俺を見捨てずにいてくれるのなら、これ以上の幸せは無いと思った。
「…これから、大変だよな」
「…?」
関係を持った女達への後始末や、姫はもちろん、親友達へのお詫び、そして――何度も何度も洗濯された何も匂いの無い衣服への違和感。
自分自身の事だ。
少しの好奇心があったとは言え、こうなる事を分かっていたはずだ。
馬鹿だ。
馬鹿すぎる。
俺も、“お前”も。
思わず小さく呟いた俺を隣から見上げる姫に――不意打ちでキスをした。
「…ファーストキス、いただき」
「…? 初めてじゃないよ、」
「俺は姫とするの初めてだぜ?」
笑って言って、苦笑した姫に今度は長く唇を重ねた。
心地いい、安心する。
好きではない奴とキスをしたいとは思わない。
身体を重ねる事も、満たされる事は無い、ただの性欲の捌け口でしか無かった。
それ以上の事は知らない。
姫と会わなければ、一生知らなかったかもしれない。
好きな人だけに触れる事を。
愛情を持って、ただ1人を愛する事を。
その幸せな喜びを。
…**…
「――すげえ、記憶引き継いでる」
目を覚ました時、第一声がそれだった。
俺の声で、先に起きて身支度をしていたジェームズと、眠たそうに目蓋を開けたリーマスがこちらを見た。
ピーターはまだ夢の中である。
「おかえり親友。今、どんな気分だい?」
苦々しい笑みを浮かべながら、ジェームズが言う。
「最悪だな…あ~マジで俺、馬鹿じゃねぇ? ……っ」
「君が馬鹿なのは、僕等全員承知の事さ」
「もちろん、姫も…ね」
その一言だけを言うと、朝が弱いリーマスはまた眠りについた。
頭が少し混乱している。
1ヶ月分、別の記憶が入っているのだから当たり前だ。
否、俺自身の記憶ではあるが。
自身への嫌悪感が、止まらない。
「――俺、姫のとこ行ってくる、」
戻る日の朝、談話室で待っていると約束した。
急いで着替え、匂いのしない制服にしかめながら袖を通す。
「うん、やっぱ姫の匂いじゃなきゃ落ち着かねえ!」
「何言ってんの?」
呆れ顔でジェームズだけが俺を見送った。
階段を降り、談話室に顔を出せば、やはり姫はすでに待っていた。
足を止めずに、
「姫!」
「シリ、――わっ」
「っごめん、ごめん、ごめんごめんごめんごめん…! あー! 何回言っても謝れない気がする…!」
強く強く、ぎゅっと抱き締めながら、存在を確かめる。
姫が泣いていた顔だけが脳裏に強く焼き付く。
どうしようもない、後悔。
どうにもできない、後悔。
「許してほしい、なんて思ってない、むしろ許してほしくない、一生、…」
「シリウス…」
「姫…たくさん、たくさん言いたい事あるけど、」
“――愛してる”
それが俺とお前との、唯一の繋がり。
絶対切れない、強い結び。
この事を、俺は絶対忘れないだろう。
…* 雑記 *…
ようやく終わりです。
シリウス1人称の方が書きやすいでした。
匂いにこだわっているのは犬だから(笑)
連載途中、『満たない』と書いた部分、正しくは『満たされない』です。
次の連載は考えていますが、次からは全部書き終えてから配信する事にします…。
PR
Aoiro*Stone/連載~7
2012年04月08日 23時14分 発行
2012年04月08日 23時14分 発行
【結び目7*シリウス*連載】
部屋に戻ると、ジェームズとリーマスだけが自分のベッドに横になっていた。
ピーターはまだ戻ってきていないらしい。
ローブとネクタイを適当に放り投げ、自身のベッドに腰を下ろす。
「……」
――泣いていた。
姫が、1人で。
先程の光景が頭から離れなかった。
拒絶された気がした。
解かれた手は行き場を無くし、何故だか一瞬見えたあの涙が、忘れられない。
「…なあ、ジェームズ」
くん、と嗅いだシャツからまた嫌な匂いがし、急いで脱ぎ捨てながら、寝転がって本を読むジェームズに声をかける。
「んー?」
「俺って、本当に誰かと付き合ってるのか?」
最初にそんな事を言われたはずだった。
いや、断言はしていないけれど、いないならいないで否定するはずだから、肯定と一緒のはずだと思っていた。
そう聞けば、そこでやっとジェームズがこちらに視線を向けた。
俺は素早く制服から部屋着に着替え、魔法で脱いだ服達を洗濯機の中に入れた。
ローブでさえ、毎日洗っている。
――匂いが、取れないのだ。
答えたのは、課題の手を止めたリーマスだった。
「…自分で分からないなら、付き合っていないのと同じだよ」
少し距離を置かれた返事が返ってくる。
ジェームズも同じ考えらしく、何も言わない。
冷たい空気が微かに漂う。
それでも、俺は続けた。
「そう、だよな……でも、近寄ってくる女は皆違う、なのに、なんでそいつは言ってこない? …結局、それだけの関係って事じゃないのかよ?」
「…やけに悩んでるね。昔の君は全く考えなかった事だ」
「たぶん、…“現在”の俺が、身体に残ってるんだ、どんだけ女を抱いても満足しねえし…気持ち悪くさえ思える」
「でも…止めないよね。もしかして、見つからないからってイライラの解消にしているんじゃない?」
リーマスが嫌なところを突いてくる。
ジェームズも起き上がり、完全に本を閉じて、同じ高さから目線を合わせてくる。
2人からの鋭い視線、睨まれているかのような。
いや、事実責められているのと一緒だ。
自覚はしている。
「…だって、今更止めたって俺はとっくに穢れてるだろ、変わんねえよ…」
「我が親友ながら…がっかりな言葉だね」
「ジェームズ…?」
「自分の事なんだからこうなる事を予想していたはずなのに、それでも自分とあの子に賭けた君は、僕の理解を超えてるよ。よほど凄いのか、それとも愚かなのか…」
「何、」
独り言のようにそう呟いたジェームズは、完全に目を伏せていた。
諦めたような、がっかりしたような…そんな表情で。
リーマスも小さくため息をついたのが分かった。
「残念だけど、僕達はもう手助けはしてやらない。自滅の結末にならないよう、祈ってるよ」
最後に俺に残したのは、そんな言葉だった。
…* 雑記 *…
久々になりました…;
会話だけ書いてた物に、文章付け足しただけですが。
Aoiro*Stone/連載~8
2012年05月23日 12時59分 発行
2012年05月23日 12時59分 発行
【結び目8*シリウス*連載】
いつになったらこの痛みから解放されるのだろう。
日付が早く変わってくれないか、願う毎日になった。
現実から逃げたくて仕方がない。
どれだけ涙を零しても、シリウスは変わらないのだから。
2人だけが選択していた授業を終えて昼食に行く前に、リーマスと共に先に荷物を置くため、寮に向かう。
シリウスがこんなふうになってしまってからは、一緒にいてくれるようになったリーマス。
代わりにジェームズは、シリウスに付いていた。
もう何日も、皆で集まって話をしていない。
「最近、シリウスを避けてるね…?」
リーマスがそっと呟く。
気遣ってくれているのが、とても分かった。
シリウスに気付かれないように、同じ授業でも視界に入らない遠い席に座ったり、食事の時間をずらしたりしていた。
私はこくん…、と頷き、
「…見たくない、……シリウスは、また女の子と遊びたくて魔法を使ったのかな? …私が傍にいて、邪魔だった…? そんな事ばかり、考える…」
完全なマイナス思考を口に出す。
そのつもりは無かったはずなのに、考えていた事を言葉にしたら、また何度も何度も流した水分が、瞳に浮かんでくる。
リーマスの手が、そっと抱き寄せてきた。
人前で泣く事などほとんど無かったはずの私が、彼の前では隠す事が無くなった。
泣きたい時は泣けばいい、と優しく言ってくれる。
リーマスになら、安心して身体を預けられる。
「…そんな事ない、そんな事ないよ…」
シリウスの親友でもある彼も悔しいのだろう、悲痛に言葉を繰り返す。
痛みを分かってくれているリーマスがいるからこそ、私は甘えてしまっていた。
「――っどこいったんだ?」
そんな声は、すぐそこのグリフィンドール寮の入口から聞こえた。
私が涙を拭ったのと同時に、そこからシリウスとピーターが現れる。
「あっ…リーマスと姫…、」
「っと、悪い、お邪魔だったか?」
「シリウス、ピーター」
(タイミングが悪い)
リーマスが内心そう思いながら、私と離れた。
誤解されるから、なのだろうが、シリウスに気にしている様子は無かった。
やましい事をしていたわけではないので、私もリーマスも気にしてはいないけれど、シリウスの言葉がまた胸に突き刺さる。
私はシリウスから隠れるようにリーマスの影になった。
「何、どうしたの?」
「いや…飯食いに行くってっつったのに、ジェームズが窓からリリー見つけたとか言って走り出してな…」
「僕等は見かけてないよ」
「そうか…。あいつ、どこから行ったんだか…」
「シリウス、もう外にいるかもしれないよ。ジェームズ早いもん。玄関のとこに向かった方がいいかも…」
「だな、それで見つからなかったら先に食ってるか」
息を切らしているピーターを休ませるため、シリウスはしばし足を止めた。
ふと、黙ったままの私にちらりと視線を向ける。
「姫…最近なんか元気ないよな?」
「…!」
シリウスが私に声をかけたのは聞こえたけれど、うまく声が出せず、沈黙してしまう。
代わりにリーマスが「…ちょっと体調が悪いだけみたいだから」と言ってくれた。
「…そっか」
私が答えなかった事で、変な空気になったのが分かった。
それでもシリウスを見る勇気が出ない。
彼が心配してくれている事は確かなのに。
次第にこれ以上居辛くなってしまい、私はリーマスのローブを握る。
「…ん?」
「先、寮に戻ってる…」
「うん、分かった。…気をつけて」
心の中で深呼吸する。
最近喋っていないから、シリウスに心配させてしまったんだ。
今のシリウスと向き合う事はまだできないけれど、このまま気まずい関係ではいたくない。
久し振りに、シリウスを見上げた。
そして精一杯普段通りの笑顔を見せ、「心配してくれて、ありがとう」と言った。
シリウスが戻るのは一週間も無い――あと数日だけ…我慢すればいいのだ。
…* 雑記 *…
またしばらくぶり。
連載が完結しないせいで他のが配信できないため、昨日朝から頑張って書いてました。
今日は続けて最後まで配信します。
Aoiro*Stone/連載~9
2012年05月23日 13時00分 発行
2012年05月23日 13時00分 発行
【結び目9*シリウス*連載】
一瞬だけ笑ってみせ、1人寮の中に入った姫を見続ける俺に、リーマスは気付く。
「…気になる?」
無意識で視線を追っていたせいか、その静かな言葉でさえ、吃驚した。
「え、いや…久々に笑ってるのを見たから、…姫って大人しい方だけどいつも笑ってたじゃん」
「そうだね」
自分の記憶にある彼女は、今と変わらぬ姿のまま(否、髪は今より短かった)、笑顔が似合う少女だった。
決して元気一杯で、皆の前に立つような感じではないけれど、隣で笑ってくれていたら安心するような――そんなイメージしか無い。
「…この一年で何かあったのか? 今のだって無理矢理笑ってただろ。…俺、この1ヶ月ほとんど笑ってるの見てない」
「……」
「泣いてるのは何度か見た。あと、泣きそうな顔してたり…、」
最近の日々を思い出せば、簡単に姫の事が浮かんできて、自分が案外、彼女を気にかけていた事を自覚する。
「ふーん…見ていないようで見てるんだね」
「…お前も、俺を怒ってるんだよな…?」
「まあね。元の君に戻ったら殴りたいかもね」
この間ジェームズに言われた言葉、『残念だけど、僕達はもう手助けはしてやらない。自滅の結末にならないよう、祈ってる』――自分がどれだけ馬鹿な事をしていたか、親友達のその重い言葉が示していた。
本当はもっと言いたかったに違いない。
だけど彼等は、それだけの言葉にとどめた。
“現在”の俺への優しさだと思った。
「……1つ聞いていいか?」
「どうぞ」
「お前、姫と付き合ってる?」
「どうして?」
「気になる、いや…ずっと気になっていたんだけど、お前が傍にいるから…」
「――好きになった人が同じでも、僕は気にならないよ」
「そう、だよな、……」
リーマスは何か言いたげにしばらく俺を見つめていたが、黙ったままの俺からやがて視線を外し、再び口を開いた。
「ちなみに僕と姫は付き――」
「いい、やっぱり言わなくて、…自分で考える」
「そう」
リーマスの言葉を遮り、俺達はそこでようやく別れた。
…* 雑記 *…
ジェームズはきっと捕まらないでしょう。
リーマスが強気です。
Aoiro*Stone/連載~4
2012年03月15日 10時39分 発行
2012年03月15日 10時39分 発行
【結び目4*シリウス*連載】
物色するように、大廊下の壁に寄りかかり、通り過ぎる生徒を眺めてみる。
主に狙いは他寮の女だ。
自分からは声はかけない。
俺が動かぬとも、寄ってくる女が多い事はもう知っているから。
「あらシリウス、暇そうね」
「よう、アルアシア」
同学年のレイブンクローの生徒。
何回か遊んだ事がある――その内数回は寝たな。
頭の悪い女では無いから、嫌いじゃないタイプだ。
よし、今日はこいつにしよう。
瞬時に判断し、わざとそれっぽく表情を変えてみせた。
「暇なんだ。退屈してるとこ」
「じゃあ、久し振りに私と遊ぶ?」
「…そうだな。付き合ってくれるか?」
「勿論よ」
隣に並ぶと、彼女はするりと腕を絡めてきた。
俺もそうだが、彼女もこういう事に慣れている。
わざとそういう女を選ぶのが、一番いい。
さて、どの教室が空いているか。
そんな事を頭に巡らせ、彼女が話す言葉に適当に相槌を打った。
…**…
普段使われていない冷たい教室の扉が完全に閉められたのを見送ってから、口を開く。
「――ま、こんなもんだろ」
アルアシアが出て行った後、床に敷いていたローブを手に取る。
羽織ろうとして、そこでまだシャツのボタンが外れたままな事に気付いた。
億劫と感じ、そのまま椅子にもたれかかった。
「……」
何だか、違和感を感じる。
物足りないというより――“満たない”
身体が。
いつもの行為を繰り返しただけというのに。
満足感が得られず、結局相手が悪いのだと思い、早々に手を止めたわけだが。
はたして本当にそうなのか。
まるで――自分の身体では無いようだった。
(身体と意識がまだ合ってないのかもな。明日また別の女で試すか)
ため息を付き、ローブに袖を通す。
すると、先程の彼女がつけていた香水の匂いがし、顔をしかめた。
匂いを移されるのは嫌いだ。
ああ、けれど、今朝のは――
そして、ぽつりと呟く。
「…消えたな」
一瞬浮かびそうになった何かに、理解できない感情が出たのを俺は知らないふりをした。
…* 雑記 *…
すぐに浮かんだアルアシアって名前、結構気に入ってます(笑)
連載は2桁いかないつもりでいこうと思ったけれど、完全超えますね…。
Aoiro*Stone/連載~5
2012年03月15日 12時01分 発行
2012年03月15日 12時01分 発行
【結び目5*シリウス*連載】
最初の一週間は、シリウスとジェームズが一緒に色々な場所へ見に行っているのをよく見かけた。
それから、やる事があまり無くなったのだろう、私達の目に付かないような場所でシリウスが女の子を連れて歩いている姿を目にするようになった。
どうやら、一部女の子の間では久し振りに女遊びを再開したシリウスが記憶を無くしているという事がひっそりと広まったらしく、我は我と声をかけているらしい。
――悲しさに、涙が止まらなかった。
私とは毎朝挨拶を交わしてくれる、それだけの仲でしかない。
もう二度と見たくなかった光景が、また繰り返されている。
(…約束、したのに)
そんな言葉が出てきて、慌てて否定した。
違う、シリウスはそのつもりじゃない――今の彼は一年前のシリウスだ。
必死に思い込もうとした、別の人だと。
しかし、それでも。
好きな人が他の女の子の肩を抱き、空き教室に入っていくのを、また繰り返し見る事になった事実は変わらなくて。
シリウスは今も昔も同じシリウスのはずなのに、その存在を否定しようとしている自分がますます醜い人間になっていくのも悲しかった。
「…ふ…、っ…」
「姫…」
リーマスがぼろぼろと泣き崩れる私を抱き寄せる。
私とシリウスの事を知っているのはリーマスとジェームズだけだ。
だから、頼れるのも言葉を吐けるのも彼等しかいない。
ぽんぽん、と頭を撫でてくれる。
リーマス達は今のシリウスについてあまり話そうとはしなかった。
きっとシリウスがやろうとしている意図を知っているからなのだろう。
どうして、私には何も言ってくれなかったのか。
気が付くと、シリウスを責めそうになる自分が嫌で仕方がなかった。
…**…
最近よく見かけるのは、リーマスと姫が一緒にいるところだ。
気が付けば、2人で話しているのが目に入った。
元々リーマスと姫が仲がよかったのは知っているから特別違和感は無いけれど、なんとなく驚いた。
リーマスが俺達以外と女と長時間いるなんて、珍しい。
「リーマスって、姫と付き合ってるのか?」
「ん~、さあね」
ジェームズがもったいぶったように答える。
肯定も否定もしない。
という事は、肯定だろ。
「そっか、やっと幸せになったんだな」
明るくそう言えば、ジェームズは意外にも眉を寄せた。
俺もつられて固まってしまう。
「ジェームズ?」
「…いや、何でもない」
何か言いたげに口を開きかけたが、結局何も言わなかった。
そんな事が、ここ数日たびたびあった。
どうしてか、と聞く事もできたけれど、なんだかそれは、一年後の自分自身がジェームズ達に口止めしている気がして、しょうがないと諦めた。
ジェームズ達も俺の扱いに少し戸惑っているのが分かるけれど、俺も一年離れてしまった友人達に困惑してないと言えば嘘になる。
「トイレ行ってくる」と言って、部屋を出た。
マイナス思考は性に合わない。
「シリウス…これは本当に一か八かの賭けだよ…」
ジェームズが俺が出て行った後、何かを呟いたのを俺は聞く事ができなかった。
「まったく君は…たまに僕よりもすごい事、しちゃうんだから」
…* 雑記 *…
切なさをうまく表現できない…。
ジェームズとリーマスはもどかしさと苛立ちを抱えてます。
Aoiro*Stone/連載~6
2012年03月22日 10時18分 発行
2012年03月22日 10時18分 発行
【結び目6*シリウス*連載】
今日は休日――なのに、朝見かけたきり、ジェームズとリーマスはいるのに、彼はいなかった。
シリウスは、また誰かと一緒にいるのだろうか。
そう考えてしまうと、どうしようもなくて。
一人になりたくて、人目を避けて廊下を歩く。
私はこんなにも弱い人間だったんだろうか。
涙が溢れてくる。
気が付けば、シリウスとの思い出の場所に来てしまっていた。
(この廊下の先で、よく新しい魔法を見せてくれてた…)
『姫、次はどんな魔法が見たい?』
『んー、綺麗なのがいい。見てて楽しくなる魔法!』
『相変わらずそういうの好きだよな。よし分かった。探して取得してやる。そしたら、ちゃんと見てくれよ?』
『うん! でも、危険なのはやめてね?』
『はは、OK!』
また水滴が頬を流れた。
誰も見ていない。
なら、シリウスを見つける度、我慢した涙は今零しておこう。
水で視界が揺れる。
何も見えなくていい、もう何も見たくはない。
「……シリウス…」
消え入りそうな声で呼んだ名前は、静かな廊下で虚しく消えていく。
不意に目の前の空き教室がガラっと開いた。
「!」
驚いて足を止めると、出てきたのは今一番会いたくなかったシリウス。
目に止まったのは彼の格好で――シャツは半分ボタンが開けられ、ローブとネクタイは手に持っている。
まさか、と思ったら、遅れて同じように着崩した女の子も出てきた。
「――」
眩暈が、しそうだった。
私に気付いたシリウスが声を出す前に、流れていた涙を慌てて隠し、後ろを向く。
「…姫?」
邪魔になったのかすぐさま女の子を追いやってから、シリウスが肩に手をかける。
久々に触れた手にびくっと反応してしまった。
――他の子に触れた手で触らないで!
口から出そうになったその言葉をぐっと我慢する。
「どうした? 何で泣いて…リーマスと喧嘩でもしたか?」
「…ちがう、いいから…放っておいて、」
振り向かせようと引き寄せられたシリウスから知らない人の匂いがした。
一緒にいたくない…!
頭で考えるより先に腕を解いて、逃げ出した。
もう駄目だ、これ以上堪えられない、でもまだ――…シリウスが好きだ。
この気持ちだけは、どうやったって消えない。
…消す事はできない。
…* 雑記 *…
ちょっと文が気に食わなくて放置してから読んでみたら、まあいいかって思った。
もしかしたら10話くらいで終わるかも。
早く書き終わしたい…。
Aoiro*Stone/連載~1
2012年03月13日 18時27分 発行
2012年03月13日 18時27分 発行
【結び目1*シリウス*連載】
夕方の談話室は授業が終わった寮生達が集まり、雑談したり課題に手をつけたりとわりと騒がしい。
自分もまた例外ではなく、友達と明日までの提出の課題を終わらせる事に必死だった。
「――っ!」
その時、突然ぼんっと音が響いたかと思うと、ガタンと人が倒れた音も続いて背後からした。
皆がざわつき、私も驚いて振り向けば、先程から談話室でこそこそ何かをやっていた4人組。
ジェームズ・シリウス・リーマス・ピーター達が原因らしい。
倒れたのはシリウスで、私が椅子から慌てて立ち上がる時には、自身で起き上がろうとしていた。
「い、てえ…」
「大丈夫かい?」
「失敗、かな」
リーマスが呟く。
観察するようにただ眺めている2人に対し、ピーターがシリウスに手を貸した。
「げっ、お前、急に太ったな!」
ピーターを見て、シリウスが叫ぶ。
どういう状況なのか私も含め、周りの生徒達も理解できていない。
「よし、成功だ」
「…僕、そんなに太った?」
「シリウスは目と記憶力がいいからね。気にしなくていいと思うよ」
と、本人達は周囲の目も気にせず、さくさく話を進めていく。
シリウスの様子がおかしいのだけは分かったが、気さくなようでこの人達はたまに誰も寄せ付けないオーラを持っている。
自分達で考え、自分達だけで動く時は、他人が話しかけるのも許さないような、彼等だけの世界みたいなものを感じた。
よくは分からないけども、特に大変な事は起きていないだろうと察して、周りは追求せずに「いつもの事だ」と言うように、ジェームズ達から視線を外し始めた。
しかし私は心配だったので、こそっとリーマスを捕まえに試みた。
「リーマス、ちょっと…」
「姫?」
「何、どういう事…?」
「ぁあ、君には説明しておかないとね。――今のは、シリウスが自分で1ヶ月間、一年前の記憶に戻る魔法をかけたんだ。本当は学生が使っちゃいけない魔法…なんだけど、やりたい事があったみたいで」
「え……授業とか、どうするの…?」
初めて聞くような魔法に、うまく思考が追いつかないけれど、つまり今は一年前のシリウス、という事なのか。
私の心配をよそに、リーマスはなんでもない事のように笑った。
「僕達がフォローするし、大抵のは暇な時に勉強してあるから。…まさか本当に成功させるとは思ってなかったから、さすがシリウスだよね」
きっとこれ以上に危険な事をし慣れているからなのだろう。
でも、彼等が笑っているのならば、少し安堵した。
「…大丈夫なんだよね、安全なんだよね?」「大丈夫、ちゃんと調べてるから」
リーマスはしっかりと頷いてくれた。
その事にほっとし、改めてジェームズと話しているシリウスに視線を向ける。
…* 雑記 *…
前からやってみたかった短文連載!
あらすじ程度には最後まで書いてあるので、後はそれに文字を付け足していくだけです。
Aoiro*Stone/連載~2
2012年03月14日 09時15分 発行
2012年03月14日 09時15分 発行
【結び目2*シリウス*連載】
「とりあえずこれ、見て」
「あ?」
自分がどうして談話室にいるのかに気付いた俺が疑問符を付け始めた瞬間、ジェームズは机の紙を指す。
大人しくそれを読むと、今沸き上がっていた謎が解けた。
それは、明らかに自分の筆跡。
自分が自分へと、今の状況を説明する文が簡単に書かれていた。
魔法で記憶だけ一年前に戻っていて。
1ヶ月後にはその魔法は解け。
これをやった目的は、秘密である事。
机に広げられた数々の本とたくさん調べたのだろう、自身でまとめたらしい羊皮紙も軽く読み、納得した。
「OK?」
「ああ。――俺、無茶な事するよな」
「全くだよ親友」
2人でニヤっと笑い合う。
少し混乱はするけれども、なんとかなるだろう。
だんだん楽しくなってくるのは、やはり俺がやった事に間違いはない。
「ところで、お前はこの一年でリリーを手に入れたのか?」
「…あともう少しって事さ」
「なんだ! まだかよっ」
嫌々ながらジェームズが言うもんだから、俺は吹き出すように笑ってしまう。
まだなのか、そりゃあそうだろうな。
笑う俺の後頭部に、ジェームズから拳のプレゼント。
「特定の人と付き合わなかった君に言われたくないね!」
「何、俺まだ遊んでるわけ?」
そうだよ、なんて返ってくると思ったが、意外にもジェームズは一瞬黙り、そして悪戯げにかわした。
「さあ…どうでしょう?」
「なるほど、自分で見つけろって事か?」
意味深なジェームズの言い方に何となく勘づく俺。
ジェームズが詳しく言わないという事は、俺自身に口止めされているのかもしれない。
しかし、想像がつかない。
女と遊ぶのは好きだけど本気にはなれないし、まして1人を選ぶなんて今の俺には無理だ。
にわかに信じがたいが、それが事実かどうかは自分で確かめるって事か。
「面白いゲームだな」
「うーん、まあゲームとも、言うのかな」
「1ヶ月、俺の好きなようにしていいんだよな? よし、まずはジェームズ、新しい抜け道とか教えろよ」
「そうくると思った。OK、行こうか!」
…* 雑記 *…
ヒロイン視点、シリウス視点、で書いていきます。
何年生、とかはあえて決めてません。5~7年生くらい。
女遊びの激しいシリウスです。
Aoiro*Stone/連載~3
2012年03月14日 10時34分 発行
2012年03月14日 10時34分 発行
【結び目3*シリウス*連載】
一番先に気付かなければいけなかった事をやっと思い出したのは、翌日、1年前に記憶だけ戻ったシリウスから挨拶を返された時だった。
「おはよう、シリウス」
「ああ、おはよう、姫」
昨日は早々にジェームズと2人で出て行ったため全く話しかける暇が無かったので少し緊張して初めて話しかけた私に対し、シリウスはあっさり答え、するりと通り過ぎていった。
いつもは、挨拶の後に少しだけ話をする。
よく眠れたか、今日の授業は何か、寝癖がついてる…そして、話しながら皆で一緒に朝食を取りに行くのだ。
その瞬間、気付いた。
そこまでシリウスと仲良くなったのは、半年前だ――。
「…、…」
何とも言えない空虚感が、全身を一瞬で冷たくさせた気がした。
だから昨日、リーマスが時折心配そうな顔を私に見せていたのか。
(シリウスが混乱するだろうから、わざわざ言わない方が、いいよね…)
そう考え、一度来た道を戻り始めた。
どうしてだか、食欲が無くなってしまった。
寮に戻り、授業の準備をして、それから――と無理矢理今日のスケジュールを考える。
その時私は予感していた。
一年前であろうと、シリウスはシリウスだ、と思って昨日は眠りについた自分を後悔する。
一年前のシリウス。
その時の彼を見ていた自分の記憶は、確かにまだある。
それは決して、楽しいものでは無かった事を私はようやく思い出した。
…* 雑記 *…
書くのが楽しいです。
ありふれた展開ですね。
Aoiro*Stone/ドラコ
2013年06月06日 00時51分 発行
2013年06月06日 00時51分 発行
【ドラコ*誕生日SS】
彼女からの贈り物がどうしても欲しかった。
しかし、彼女とは同じ寮でも無ければ、共に並んで歩いた事さえない。
ただ、合同授業などで話すくらいの仲――それでも俺は、望んだ。
どうか、他のたくさんのプレゼントの代わりに、彼女からの唯一のプレゼントに変えてくれないだろうかと。
それだけしか望まない。
他の物はいらないから。
「この間ね、ちょっと占い師さんに占ってもらったの」
「へぇ、どこの?」
「扉に黄色いカーテンが付いてる本屋さんあるでしょう? そこの裏の通り。でも、いつも場所は変えてるみたい」
「怪しくなかった? たまにインチキいるじゃん。しかも料金高めとか」
「ううん。綺麗なお姉さんだったし、良心的なお値段だったよ?」
授業が始まる合間に後ろから聞こえた会話。
声だけで、姫だと分かった。
教科書を眺めていた手を止め、その声に耳を研ぎ澄ました。
「でね、恋愛の事を占ってもらって、こんな事言われたの」
そう言ってしばらく黙る。
どうやら紙に書いてるようだった。
思わず、後ろを振り向きたくなるのをこらえて、反応を待つ。
「ふーん……誕生日プレゼントねぇ」
「ちょ、声に出しちゃ駄目って、」
「ごめんごめん。そっか、じゃあ――」
姫の友達は、急にひそひそと話し始めた。
そのせいで全く会話が聞こえない。
内心舌打ちをしたものの、大事なキーワードが聞けた事は確かだ。
『誕生日プレゼント』――単純に考えるならば、好きな相手の誕生日にプレゼントを送る…という事だろうか。
来月は俺の誕生日がある。
姫の誕生日はまだ先だから……もしかしたら、この時にプレゼントを貰えれば期待できるかもしれない。
好きな相手が俺であるかそうでないか、自信があるわけではないが、告白するのに確証は欲しい。
まずは誕生日にどうなるか待つ事にした。
「ドラコ、誕生日おめでとう! はい、プレゼント。選ぶの大変だったんだからね!」
「…ああ」
「ねっ、開けてみてよ」
「……」
「ほら、こういうの好きでしょ? 部屋に飾ると素敵よ!」
「ああ……貰っておく、パンジー」
「どういたしまして!」
押し付けるように手に渡されたよく分からない置物にお礼を言う気になれず適当に流せば、パンジーは満足げに去っていった。
いなくなった瞬間、自然とため息が出る。
先程から何人かに捕まり、その度に趣味の悪い額だったり壺だったり高級ワインだったりを渡される。
とりあえず受け取ったものの、その度に荷物が重くなる。
俺が欲しいのはこんなものではないのに。
今日は、運が悪く合同授業が無かった。
いつもは少なくとも挨拶はするのに、それすらできる場所が無い。
授業が無い時は、なるべく教室の外に出てはみたものの、そうするとまたプレゼント攻撃に捕まってしまう。
「…うざったい…」
全ての授業を終えた途端、人から逃げるように、塔の方へ向かった。
結局、本日はまだ一度も姫を見ていない。
塔の螺旋階段の途中で足を止め、窓を開ける。
何度目か分からないため息をつけば、風と共に消えた。
目の前に紅くなり始めた夕日が見えた。
何をやってるんだ、俺は。
こんな誕生日、初めてだ。
ふと目線を下げると、中庭に何人か生徒がいるのが見渡せる。
その中で、1人花を摘んでいる女生徒が目に入る。
遠くても分かった、それは姫だ。
認識した途端、足は自然と階段を降りていた。
「…何、してるんだ」
「あ…ドラコ…」
そっと近付いて、目の前で立ち止まると、影に気付いて姫が顔を上げた。
「花、好きなのか」
「えっ、う、うん…好きだけど…」
「?」
急に慌て出した姫の様子に、首を傾げる。
姫は少し戸惑ったように花を見つめて考え込み、それから再び慣れない手付きで摘み始めた。
「急ぎか? 同じのを摘めばいいんだろう?」
手伝おうと思い身近な花に手を伸ばせば、「あっ!」と姫の焦った声に停止する。
同時に、気を抜いた姫の手から花が落ちてしまう。
「ちょ、ちょっと待ってて、触らなくていいから、」
「……悪い」
瞬間、伸ばしてた手を引っ込める。
その拒絶の言葉に、驚くくらいに一瞬で全身が冷たくなるのを感じた。
自分がどんな顔をしていたのか分からなかったが、俺の表情を見た姫が今度は泣きそうに顔を歪め、後ずさった俺の服を掴んだ。
「違うの、…そうじゃなくて…」
「――」
沈黙が流れる。
姫が顔を下げ、動揺しているのは分かったが、本当はもう勢いのまま立ち去りたかった。
けれど、この手を振り解けなかった。
――やがて、姫は先程落としてしまった花をかき集めると、俺の前にそっと差し出した。
「……?」
「これ…本当はもっとちゃんと…たくさん摘んでラッピングしたかったんだけど……プレゼント、です」
「…プレゼント? 」
「本当は、夕食の時に渡そうと思って、だから…なるべく新鮮がいいから、今摘んでたの、でも――ドラコ来ちゃった…」
失敗した、と姫は苦笑いした。
でも、やはり泣きそうにも見えた。
姫の言葉をようやく理解してから、俺は震える手から花を受け取る。
手のひらごと握れば、ぴくりと姫の指が動いた。
弾かれたように上げた姫の表情は、信じられないとでも言うようだった。
「誕生日プレゼント…という事か?」
「…こ、こんなの、受け取ってくれるの…?」
「何を言ってるんだ」
姫を自分の元へ引き寄せる。
「一番欲しかった」
(占い師には何を言われたんだ?)
(えっ、聞いてたの!?)
(…聞こえたんだ)
(えっと…好きな人の誕生日プレゼントに、お花をあげるといいよって…)
(ふーん…なるほどな)
…* 雑記 *…
別のSS、書いてたのがありましたがそれが行き詰まったので、急遽別のネタ考えて急いで書きました。
間に合いませんでしたが…果たしてこれはドラコ?になってるか不安です…。
SS久々すぎてスランプでしたが、もうあんまり考えないで書く事にしました。
どう頑張っても文才は無いから諦めます…
とりあえず、誕生日おめでとうでしたドラコ!!
Aoiro*Stone/ドラコ
2013年06月05日 10時48分 発行
2013年06月05日 10時48分 発行
【ドラコ/KM】
…疲れた。
笑うな、他人事だと思って。
何でこうも、女共は自分の都合で物を押し付けてくるんだ?
フクロウ便で腐るほど来たと思ったら、至るところで待ち伏せだぞ…どれだけ時間を無駄にしたのか。
持ち運ぶのにも手間かかるし、部屋が無駄な物で埋まる…最悪だ。
お前が横にいれば、女避けになったのに、何で来なかったんだ?
…別にあいつ等に祝えって頼んでないし、下心見え見えの奴等に何を貰ったって嬉しくない。
で?
お前は何をくれるんだ?
分かってるだろう、俺はお前のしか欲しいとは思わない。
…待たされた分、好きにさせろ。
…* 雑記 *…
本日の夕方~夜の設定で。
時間無いのでもう配信しちゃいます。
ドラコの口調が若干あやしいです…。
Aoiro*Stone/シリドラ
2013年06月05日 10時46分 発行
2013年06月05日 10時46分 発行
【シリドラ*BL*会話文】
「あ? 吃驚した、どうしたんだお前」
「ルーピン先生に暖炉から入れて貰った」
「あっそう。何か用か?」
「…今日、何の日か覚えてるか」
「今日? んー…知らねえ。何だっけ?」
「……」
「んな怖い顔すんなよ。嘘、お前の誕生日だろ、俺の記憶力舐めんなよ?」
「…そういうのがムカつく」
「お前の反応が面白いからなぁ。そうゆーとこ、ルシウスと似てなくてよかったな!」
「父の名を出すな」
「何、まだ疑ってんの? ――言っとくが、ルシウスとは何もねえぜ? これ本当マジだって。あんな堅物、俺なんか嫌われてたんだからな?」
「平気で嘘付く奴の言葉は信じない」
「あーこれが日頃の行いって奴だな。分かった分かった、ちょっと来い」
「何、」
「愛されてる証拠が欲しいんだろ、行動で示してやるから」
「……」
「ったく、素直じゃねえなあお前」
(全く、可愛い奴め)
…* 雑記 *…
オリジナル設定で、リーマスが先生を続け、シリウスが無罪晴れて平和に暮らしてるという状況です。
リーマスの研究室から暖炉を通じて、留守の部屋で待っていたドラコでした。
シリドラ初ですが、これも楽しい。
Aoiro*Stone/シリウス
2013年03月10日 22時34分 発行
2013年03月10日 22時34分 発行
【シリウス*KM】
知ってたか?
今日はリーマスの誕生日だぜ。
どうせあいつ、隠してただろ?
俺なら言うけどな、祝ってほしーもん。
でさ、俺達でちょっとしたサプライズパーティーするんだけど、協力しないか?
ピーターに時間稼ぎして貰ってる間、部屋を大改造してやるんだ。
俺とジェームズだけじゃあ、つまんねぇからお前も手伝ってほしい。
プレゼントもこれから足りない分を抜け出して買いに行こうかと思ってるんだけど。
おっ、サンキュ!
喜ぶよ、リーマスも。
そういえば、この間新しい時計欲しいって言ってただろ?
聞こえた聞こえた。
だから、ついでに買いに行こうぜ、一緒に。
せっかくだからそれも付き合うって。
着替えてから行くか?
分かった、廊下で待ってる。
こっそり、見つからないようにな!
(よし、ついでにデートの誘いも成功!)
…* 雑記 *…
確認はしていませんが、おそらく当マガ一周年だと思います。(←)
先程、ちょっと重大な心配事ができたため、久々に頑張ろうと思った創作意欲が無くなってしまいました…。
ドラコ連載も、あらすじ出来上がってるのに、中々書けません…忙しいです;
リーマス、はぴば(・∀・)☆+゜
Aoiro*Stone/リドル
2012年12月31日 09時56分 発行
2012年12月31日 09時56分 発行
【記憶リドル*SS】
広いキッチンで音がするのは、ボウルを混ぜるカチャカチャというものだけ。
甘い匂いがうっすら香る空間。
そこに、足音も影も無い存在がふ…と現れる。
「…何をやっているの?」
急に背後で訝しげな声がした。
声の主は分かっているので、驚く事もなく「ケーキだよ」と答えてから、ようやく手が離せるようになり振り向いた。
腕を組んでこちらを覗き込んでいる半透明のリドルが、それは言われなくとも分かるという表情で隣に並んだ。
「クリスマスは終わったよ」
「クリスマス用じゃないよ~」
「…じゃあ何?」
「後で分かるよ。もう少しでできるから」
リドルがよくやる、にっこりと笑えば、一瞬だけ沈黙したかと思うと。
「…ふーん」
それだけを言って、大人しく姫が調理しているのを眺め始めた。
気になるなら、分からないなら、とことん追及してくるリドル。
こちらが言いたくなくても、強制的に言わされてしまうが、それが無いという事は。
どうやら、賢い彼にはそれだけでこのケーキの意図が分かったらしい。
姫も隠すつもりでは無かったので気にしない。
否、四六時中傍にいる彼に隠し事などできるわけが無いけれど。
「意外と上手だね」
「あまり作った事は無いんだけど、…魔法薬学のおかげかな」
「同じにしちゃうわけか」
「あっちの方が混ぜる回数とか決まったりして大変だよね」
「僕は好きだけど」
「私も好きだよ」
「知ってる」
「私も」
2人で笑って、作業は最終段階、苺を乗せるだけになった。
綺麗にそれを並べてから、2人分だけ切り分ける。
お皿に移し、キッチンの隣部屋のテーブルに置いた。
「食べよう」
姫が言った瞬間、実体になったリドルが椅子に腰かける。
向かい側に自分も座り、目の前の紅い瞳を見つめた。
手を出せば、握ってくれる。
「リドル、生まれてきてくれてありがとう」
今日は彼の誕生日だった。
リドルにとっては、感謝できる日ではないかもしれないけれど、どうしても祝いたかった。
自分が生まれた日を忘れないように。
自分が生まれた事を憎まないように。
「――今はこんな存在の身体だけどね」
「身体が無くても心臓が動いてなくても、喋れて一緒にいてくれてるだけで、嬉しい」
「それはどうも」
先にケーキに口をつけたリドルは、ゆっくりと飲み込んで微笑んだ。
「おいしいよ」
“Happy Birthday!”
…* 雑記 *…
久々のSSだから、イマイチ文章の書き方が分かりません。
元から分かってないけれど、ますます不明です。
では、今年は購読いただきありがとうございました!
来年もよろしくお願いします。
プロフィール
HN:
九獣へび
性別:
女性

