Aoiro*Stone
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Aoiro*Stone/ドラコ
2012年06月05日 23時10分 発行
2012年06月05日 23時10分 発行
【ドラコ*SS*誕生日記念】
大雨の中、慌てて近くの建物の中に入り込んだ。
森の側にある、小屋とは言えない小さな物置。
急な土砂降りは、しばらく止みそうには見えず、運が良く屋根がある場所に入れたものの、すでに身体はびしょ濡れだった。
唯一拭ける物が半分濡れたハンカチのみで、そしてこんな時に限って、常備携帯していたはずの杖は鞄の中に忘れていた。
蒸し暑い日だからと、ローブさえ羽織って来ていない。
ザーッとした音と、灯りの無い室内。
昼間ならば多少は見えるだろうが、夕方で更に雨空では光など存在しない。
さすがに暗闇では怖くなり、やっぱり城へ戻ろうと覚悟を決めてドアを開けた瞬間、風で入ってきた雨と共に、背後から物が動く音がした。
「もう少し待て。そのうち弱まる」
「!!」
自分しかいないと思っていたはずの場所から、別の人間の声がし、驚いた。
振り向くが、暗闇のせいで姿は見えない。
どうやら最初から“彼”はここにいたらしい。
おそらく同じく雨宿りで入っていたのだろう。
そして私は、その声が誰のものか――知っている。
「お前、杖は?」
「わ、忘れてきたの、…」
「…そうか。俺も、無い」
いつもよりもひどく落ち着いた声で、ドラコはやけに淡々と言った。
自分は別として彼が杖を持ち歩かないなんて、と思ったが、そういえば…と今日の授業でドラコが先生から罰則を受ける事になったのを思い出す。
詳しい内容は知らないが、杖を取り上げるような事を言っていたと思う。
「通り雨が来るとは聞いた。杖が無いなら尚更、まだ動かない方がいいぞ」
「…うん」
一方的に相手が誰かだと分かっているとつい名前を呼びたくなるが、ドラコと特別仲がいいわけでもない他寮の私が話しかけてもどうでもいい事だろうし、逆に名前を聞かれ、「知らない」と言われたらきっと立ち直れない。
沈黙が続いた。
手持ち無沙汰で、暗闇の中、周りに手を伸ばしてみる。
すると、暖かい感触に辿り着き、思わず悲鳴を上げそうになった。
「えっ、何、」
「…落ち着け、俺の手だ」
「あ、ご、ごめんなさい! …った、!」
「どこかにぶつかったのか?」
「っ平気、…だと思うんだけど…、――なんか倒れそう、かも……」
「何?」
動揺して一歩下がった時、どうやら物が積んであった山に背中をぶつけたらしい。
その時、斜めに傾く気配を感じ、慌てて手で抑えれば――押し返す事が不可能なほど、かなり際どいくらいに今にも倒れそうな物に逆に押し倒されそうになった。
私が少しでも動いたら、何か分からない物等が全部落ちてしまう状態である事は間違いない。
「――そこに行く。ちょっと待て」
分かりづらい私の言葉で状況を把握したのだろう、ドラコが動いた。
怒られるのかとびくびくしていたが、その声だけ聞くと心配してくれているように聞こえた。
助けてくれるならありがたいが、何も見えない暗い中で、余計にドキドキが増す。
足音が真後ろで聞くと、肩に手が触れた。
「…ここだな。ちょっと触るが、我慢しろ」
「は、い」
ドラコの指が肩に沿い、腕を沿って、両手の手の甲を探し出すと、そっと上から力を加え、斜めになっていた物をぐぐっと押し戻した。
男で、身長が高いドラコだからできたのだろう。
背中にドラコの胸が密着し、お互いに濡れているはずなのに、何故だか暖かく感じた。
「あ、ありがとう…!」
「いや、……お前、ローブも着ていないのか」
「え、うん、すぐ戻るつもりだったから、――わ、」
間近に聞こえた声に緊張して返せば、急に身体に何かを羽織らせられた。
――ドラコのローブだ。
外側は濡れているが、中までは浸透しては無く、体温がそのまま残されている。
「俺のだが、着ていろ。無いよりマシだ」
「でも、」
「いいから。――雨が弱まったみたいだな、俺は先に戻る」
言うが早いが、ドラコはドアを開けた。
まるで逃げるような早急さに、「ローブは、」と声をかければ、「返さなくていい。やる」と短く残し、本当に出て行った。
ドラコの事だから、人より複数枚持っているのだろう、一枚減っても困らないに違いない。
しかしそうとは知っても戸惑うのは、顔も名前も分からない私に、確かに優しさを見せてくれた事だ。
意外すぎる一面は、困惑するのと同時に頬を緩ませた。
密かに恋心を寄せていたが、今日のほんの数分でますます好きになったのを感じた。
ローブに残っていた彼の体温が、冷えた身体を温めてくれる。
先程まで近くにいた彼を思い出すと、気恥ずかしさにしばらく動けなかった。
きっとドラコも慣れない事をしたために、先に物置から出たのかもしれない。
翌日、きちんと乾いているかローブを確認し、綺麗に畳んで、抱きかかえた。
好きな人のだから持っていたいという欲求もあったがそれを我慢し、もしできるのならばこっそり返そうと思った。
持っているのは優しくしてもらったから尚更、なんだか申し訳ない。
ただし、自分だとばれたくないため、どうにかして気付かれないように本人に返したい。
昨日の物置に置こうかと思ったが、もう一度ドラコが足を運ぶ可能性は分からない。
スリザリン生でも無いから、寮の中へは入れない。
(あ、梟便で送ったら大丈夫かも)
やはり駄目かもしれない、と諦めようとした瞬間、ようやくその考えが浮かんだ。
「…!」
途端に、前方からドラコが歩いてくるのが見えた。
とりあえず様子を見に…と、ここを通るのを知っていて待ち伏せでいたので当たり前なのに、いざドラコを見つけると昨日の余韻を思い出してしまう。
視線をそらして、そのまますれ違うと思ったが、ドラコは視線に入らないように壁際に寄った私の目の前で立ち止まった。
驚いて顔を上げれば、
「…返さなくていいと言わなかったか?」
私の手の中のを見下ろして、そう口を開いた。
きちんと畳んでいるので、布かローブかも分からない物を見て、はっきりと。
――それは、“私”だと分かっていないと絶対に出ない言葉だった。
「え…」
「あ、――」
まるで初めから分かっていたかのようなドラコの口ぶりに驚くと、彼自身も「しまった…」という表情を見せた。
「私だと気付いて…?」
「…お前も俺だと分かっていたんだな?」
私達はお互いに見つめ合ったまま、気まずさを感じていたが――やがてどちらかともなく小さく笑った。
“愛しい君の声ならすぐ分かるんだ”
…* 雑記 *…
今日はドラコの誕生日なので、気合い入れて書きました…が、読み返すと全体的に文章おかしい!です;
声って、知っている人ならわりと分かるもんですけど(笑)
途中、違う展開にしてて気に食わなくて全部書き直そうかと思いました…。
そして、ドラコ視点も書きたくなってきました。
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プロフィール
HN:
九獣へび
性別:
女性

